医療の進歩とは?

人々の怪我や病気を治す医療は世界中で進歩しています。
19世紀には手術で麻酔が使われるようになり、20世紀前半では血液型が個人によって違うことが分かり、ジフテリアや破傷風などの感染症対策ができるようになりました。
1971年には当時のアメリカ大統領であったニクソンが、生活習慣病を治す薬を作るように呼びかけてガンと戦うことを宣言しています。
糖尿病や高血圧など大きな成果を上げた薬は結局出ませんでしたが、生活習慣病を医薬品で治すという姿勢は現在でも引き継がれています。
21世紀の医療では遺伝子に注目しています。
ヒトゲノム解析ができれば、遺伝子疾患の原因や治療法が分かり、人間の起源や生命科学、バイオ技術などあらゆる方面で使えると考えています。
現段階では人間の遺伝子が25000種類のセットで構成されていることが分かっています。
これからはその一つ一つの作用について研究することで、病気を根本から向き合い医療をさらに発展させます。
しかしヒトゲノムを応用すれば、人為的に命を作ることもできます。
これはキリスト教が重視する聖書では認められていません。
このように医療が進歩すると倫理観の問題が発生します。
人工呼吸器が発明されると、脳死状態が人の死として受け止められるようになります。
しかし死の定義は様々で、心臓が停止することが人の死であるなどの意見が出ました。
最初は脳死を人の死と考えられない人は、保守的で時代遅れだという風潮がありましたが、脳死の研究が進むにつれて脳死が人の死でないことが分かっています。
しかし脳死にならないと臓器提供はできないので、脳死を人の死と見なした方が都合の良い人たちが存在している面もあり、人間の倫理観が医療の進歩に追いついていない状態です。

進歩していない医療の分野は?

医療という全体で捉えるのならば、最も簡単な病気に対する医療と最も重い病気に対する医療に関してはほとんど医療は進歩していないと言っても間違いではありません。
重い病気に関する医療の進歩の停滞に関しては多くの一般人が馴染みのあるものになっています。
例えば、がん治療に関して言えば人類を何百年と苦しませ続けている病気ですが完全な解決方法は未だに存在しません。
世界の優秀な医師に癌の最善の治療方法を確認しても、早期発見による除去である回答に今も昔も変化がありません。
癌細胞が厄介な点は、人間の細胞をベースにして大きくなっていくことです。
栄養分の主はブドウ糖で、人間はブドウ糖を摂取しないと生きていけない生き物です。
ブドウ糖によって脳内の活動を活発にさせることができ、血中濃度を変化させてウイルスを退治させることができるようになるので、これを主たる栄養分として摂取する癌細胞に対しては効率的な手段が見当たらないのです。
実際に、身体の癌細胞を探すための手段としてこのブドウ糖の活動は利用されています。
一方で、人間に対する軽い病気に対する医療も実はほとんど進んでいないのが現状です。
この軽い病気に該当するものと言えば、風邪や熱です。
人間は、ウイルスが身体に入ると免疫機能が働いてそのウイルスを退治する機能を有しています。
そして、このウイルスを退治するための手助けとして風邪薬が開発されました。
しかし、一方でウイルスを完全に除去するための薬は未だに開発されていないのが現状です。
風邪を治療しているのはあくまでも人間の免疫細胞の力であるため、薬は現状でもそれを手助けできる役割しか持っていません。
このように全般的に医療を考慮すると、今でも医療は人間の生まれ持った免疫機能に及ばない発展しかしていないことがわかります。

医療の進歩でもたらされるものは?

拡張型心筋症などで重度の心不全となった患者さんは、人工心臓で命を繋ぎ、心臓移植主日を受けるしかありません。
しかしドナーが現れる前に命が尽きてしまったり、多額な費用が集められなくて断念したりすることも少なくありません。
渡米して心臓移植を受ける患者さんもいますが、外国人も心臓移植を待っているのに日本人がそこに割り込んで心臓移植を受けるということに対し、異論を唱える人も少なくありません。
しかし、医療の進歩でこれらの問題が解決される見通しが立とうとしています。
「心筋シート」という足の太ももの筋肉を培養したものを心臓に貼るのです。
縫合しなくても、心臓に乗せるだけで自ら新しい血管を作って心臓に貼りつき馴染み、傷んでいた細胞が元気になり、心機能も回復します。
再生医療の1つですが、自分の太ももの筋肉を使うので拒絶反応がありません。貼るだけなので手術の難易度も高くありません。
渡米する必要もありません。
この、心筋シートによる治療は2006年に大阪大学病院の倫理委員会に承認され、2007年5月に重症の拡張型心筋症の患者さんに行われました。
2007年8月には心機能が回復し、9月には補助人工心臓を外して散歩もできました。
医療メーカのテルモ(株)は、2007年より心筋シートの開発に着手し、2014年10月、国各金が細胞シートの背増販売承認を申請し、2016年4月より、心筋シートによる治療が実用化されると報じられました。
推定治療費は1000万円ですが、渡米して心移植をすると2億から4億円が必要ですので、雲泥の差です。
将来的には保険適用となるでしょう。
この治療により、医療費も大きく削減されます。
また、海外の人から心臓を貰わなくてもよくなりますし、逆に海外からこの治療を受けに来る患者さんもいるでしょうから、恩返しにもなります。
医療の進歩は、医療現場だけではなく経済や国際関係にも影響をもたらします。